話題のテオドール・クルレンツィス指揮ムジカ・エテルナ初来日公演を聴きました。
ある方からも指摘されたのですが、響きが我がデア・リング東京オーケストラにとても近いというのが私の第一印象です。
クルレンツィスの動きを見ていると、クライバーのことが自然に頭に浮んできました。二人とも見ているだけで楽しいですし、体から音楽がほとばしり出て、それがオーケストラに乗り移り、オーケストラから生き生きした音楽が湧き上がってきます。聴き手もワクワクします。
クライバー亡きあとのオーケストラ界にあって、クルレンツィスのような指揮者やムジカ・エテルナのようなオーケストラが生まれることは渇望されていたし、ようやく現れたというところでしょう。
クライバーもクルレンツィスも、一歩間違えば指揮者のショーになりかねませんが、ギリギリそうならないのは、オーケストラの響きが練り上げられていて、オーケストラから最良の響きと音楽が引き出されているからだと思います。
特にクルレンツィスの場合、弦楽器の奏法をモダンも古楽器も含めて熟知していて、オーケストラのトレーニング能力がすごく高いことが土台にあると思います。
オーケストラはケーキにたとえると弦楽器がスポンジで、管・打楽器はデコレーションにあたると思いますが、スポンジこそがケーキの要だと思います。ムジカ・エテルナの弦はクルレンツィスによって鍛え抜かれ、磨き上げられており、管楽器はある時は華やかに、ある時は荘厳にと様々に彩りや深みや変化を添えているように感じます。
日本も含めて世界の弦楽器奏者のレベルは近年飛躍的に上がっていますが、問題は絃楽器のアンサンブルを生かし切ることができる指揮者がほとんどいないことだと思います。
冒頭で、クルレンツィス&ムジカ・エテルナとデア・リング東京オーケストラの響きが近いと書きましたが、つまるところ「空間力」がクルレンツィスとムジカ・エテルナに備わっているということだと思います。
ただ、リハーサルのやり方、音楽づくりの方法論はデア・リング東京オーケストラとはかなり違うと思います。クルレンツィスのリハーサルのやり方は時間を膨大にかけ、細部を積み上げていく点で、チェリビダッケのやり方に近いのではないでしょうか?
いずれにせよ、オーケストラ界に待望のスターが生まれたことは祝福すべきことであり、どのようにして生まれてきたかについても興味があるので、別の機会いに取り上げたとりあげたいと思います。
2019年2月13日サントリーホール
テオドール・クルレンツィス指揮ムジカ・エテルナ
オール・チャイコフスキー・プログラム
1. 組曲第3番
2. ロメオとジュリエット
3. フランチェスカ・ダ・リミニ
前半の「組曲第3番」のあと、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」の第3楽章を、コンサートマスターが突如演奏し、聴衆の度肝を抜きました。さらにそのアンコール?としてイザイの無伴奏ソナタ第2第1楽章も演奏されたこともあり、2時間半を越す長さの公演となりました。しかも、 オーケストラはチェロとチューバ以外は全曲立って演奏していました。
Der Ring Tokyo Orchestra
090-2213-9158
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